close

メニュー

草なぎ剛「僕以外、音程なんてブレていない」 恥ずかしさとそわそわが「強み」に変わった瞬間

投稿日: 2025-10-14 12:55

くさなぎ・つよし/1974年生まれ。近年の映画主演作に「碁盤斬り」など。最新主演ドラマ「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」は10月13日スタート[写真:蜷川実花/hair & make up 荒川英亮/styling 栗田泰臣/costu...

出演するドラマや映画で、唯一無二の存在感を放つ草なぎ剛さん。長きにわたり第一線を走り続けてきたが、どのような思いで仕事や自分自身に向き合ってきたのか。AERA 2025年10月13日号より。

*  *  *

──昨年公開された主演映画「碁盤斬り」は、ヨーロッパでも高く評価され、Netflix映画「新幹線大爆破」も話題を呼んだ。11月15日からは主演舞台「シッダールタ」が幕を開ける。本人にとって、芝居をしていて幸せな瞬間はどのような時に訪れるのか。

「無」になる瞬間、かな。特に舞台では、稽古を重ねていくと、何も考えていない状態でも体にせりふが染みついて、役と一つになる高揚感を得られる瞬間があるんです。

 舞台は2時間近くアドレナリンが出ている状態でやっているから、特にそんな感覚になるけれど、ドラマでも長い期間一生懸命に取り組んでいると、そういう瞬間が訪れることがある。最終話とかね。

 舞台では、ラストに拍手をいただいた時に、パッとライトを見上げる瞬間も好きです。まさに、映画「国宝」のラストシーンと同じで、僕はステージに立つ側の人間だから、映画を観ていて、吉沢亮君が演じた主人公の気持ちがよくわかった。拍手をもらい、ライトを浴びて初めて感じ取ることができる「そう、これだよな」という感覚。あの瞬間を味わいたくて、仕事を続けているところもあるかもしれない。

■自分を育む材料に

──長く第一線を走り続けてきた。それでも、周囲の声や評判は気になるものだという。

 それはやっぱり気になりますよ、エゴサーチもしますし。ネガティブな言葉が書かれているのを見ることもあるけれど、すべてをひっくるめて「自分」なので、それはそれで受け入れるしかないと思っています。どう評価されているかはめちゃくちゃ気になるけれど、見たとしても気にしない。そんなスタンスでいます。

 どんな評価であったとしても、自分を育むいい材料になればいいな、と思います。もし、「棒読みだね」「下手だね」と書かれたとしたら、「よーし、次はギャフン!と言わせられるよう取り組んでみよう」「今度はもっと勉強して挑んでみよう」と思うようにしている。僕が若いころはSNSもなく、直接耳に入る機会も少なかったから、いまの若いアーティストたちのほうが大変だと思う。ある程度、僕は経験してきているから、自分の心を整えながらバランスをとっているところはありますね。

■欠点は武器になり得る

──自身の「欠点」について考えを巡らせることもあるのだという。

 数カ月前に歌番組に出演させていただいた時に改めて考えたのですが、僕は歌は決して得意ではないんです。そのことは、僕自身百も承知していて、自分が音程をうまく取れないなとずっと思っている。でも、呼んでいただくからには何か僕に求められていることがあるからで、それを「チャンスだ」と捉え、出演させていただく。

 周囲を見渡せばものすごく上手い人ばかりで、「僕以外、音程なんてブレていないじゃん」と思うと、そわそわして恥ずかしくもなってくる。実際、本当に恥ずかしかったけれど、裏を返せば、僕のような人間はそこに僕しかいないわけで、これは逆に「強み」になるんじゃないかなって。ほとんど心臓に毛が生えているような状態だけど(笑)、この場に呼んでいただけたという事実があるのだから、欠点というのは足りないことではなくて、プラスになり得ることもあるんじゃないかって思ったんだよね。こういう捉え方も大切だと思うんだよね。

 もちろん、一生懸命努力しなければダメだと思いますよ。

 ただ、弱点は誰もがさらけ出したくはないものだけれど、「自分の欠点はもしかしたら、他の人が持っていない唯一の武器になり得る可能性がある」と覚えておくだけで、人生を強く生きていけるようになると思う。

(構成/ライター・古谷ゆう子)

※AERA 2025年10月13日号より抜粋

古谷ゆう子

コメント一覧

コメントはまだありません。

ページ表示時間: 0.005 秒

コメントを投稿する

コメントを投稿するには、ログインしてください。