10月3日午前0時10分ごろ、三重県名張市の国道165号線で軽乗用車が横転。高校生を含む5人が死亡、1人が重傷を負うという痛ましい事故が発生しました。すでに報じられているとおり、この軽乗用車には、乗車定員(4人)を超える6人が乗車しており、カーブを曲がる際、バランスを崩して電柱に激突したとみられています。
実は、今回の事故現場からほど近い場所に知人が住んでおり、私はこの国道を何度も車で走ったことがあります。現場付近の道は、カーブといってもそれほどタイトではなく、見通しもよく、それだけに、なぜこのような事故が起こってしまったのかと驚きました。乗車定員や制限速度など、きちんと法律を守っていれば防げたはずで、大変残念でなりません。
そんな中、筆者は昨夜、テレビ朝日の取材に応えて、本件について短いコメントをしました。以下がそのVTRです。今回は、定員オーバーで走行することの危険性と、定員オーバーで同乗者が死傷した際の保険の問題について触れたのですが、説明しきれなかった部分について、本記事で少し補足しておきたいと思います。
上記YouTubeでコメントしたとおり、定員を超える人数が乗車すると、車両の全体重量が増し、速度の出しすぎなどによって車体のバランスが崩れることがあります。またブレーキの効きも悪くなります。
なにより、車を定員オーバーで運転することは道路交通法違反となります。普通車の場合、運転者には違反点数2点、反則金6000円が科されます。同乗者には基本的にペナルティはありません。
また、今回のように人が死傷する事故を起こした場合、「過失運転致死傷罪」や「自動車運転処罰法違反」といった刑事罰に問われますので、絶対にしないようにしてください
■定員オーバーの同乗者に保険は支払われるのか?
一方、定員オーバーと知りながら車に乗って死傷した場合、同乗していた被害者に保険金は支払われるのでしょうか?
自賠責保険の場合は「被害者救済」という観点から、死傷した同乗者に対して保険金が支払われます(ただし、車の所有者が助手席や後部座席に乗っていた場合は支払いの対象外です。他にも細かな規定があります)。
次に、自賠責の上乗せである任意保険(自動車保険)ですが、こちらも基本的には、定員オーバーでも同乗者への保険金支払いはおこなわれます。
自動車保険の約款には、補償の対象について、『正規の乗車装置または当該装置のある室内に搭乗中の者』と明記されているのですが、ここに『定員』についての記載はないため、よくないことではありますが、定員オーバーであっても、座席のある空間に乗っていれば補償されるということです。
とはいえ、いわゆる「箱乗り」と言われるような、窓から身体を乗り出す極めて危険な乗り方や、荷台やボンネット、ルーフなど『正規の乗車装置』ではない場所に乗車していた場合は、定員オーバーでなくても、保険金支払いの対象にならない可能性があります。
もちろん、こうした行為は論外ですが、実際に危険な乗り方をして死傷しているケースが散見されますので絶対にやめましょう。
さまざまな理由で同乗者への保険金が減額されたり、支払われなかったりした場合、ハンドルを握っていた運転者が損害賠償を請求され、結果的に自費で賠償するリスクもを背負うことがあります。そのこともしっかり理解しておく必要があるでしょう。自動車保険には細かな規定が設けられている(写真:イメージマート)
■初心者ドライバーの『見栄張り運転』に要注意
それにしても、今年に入ってから若者の定員オーバーによる重大事故のニュースを何度目にしたことでしょうか。
特に、これからの季節は、推薦などで進学先が早く決まる学生も増えるため、その開放感から気が大きくなって、友人たちと集まるとつい羽目を外してしまう人も多いようです。
特に、免許取り立ての若者は運転したくてたまらず、友達を乗せて見栄を張りたい気持ちになったり、まだ自分の車がないのに、友だちに車を貸りたくなったりする人がいるかもしれません。しかし、人の車を借りると、自動車保険の条件が合わず、事故が起こっても使えないといった深刻な問題が出てきます
万一事故を起こしたとき、どれだけの責任を負うことになるのか、そしてどれだけ多くの人を悲しませることになるのか、家庭や学校でもそうした話を積極的にしていただきたいと思います。
今回の事故は、現時点では誰がハンドルを握り、同乗者がどのような乗り方をしていたかは発表されていませんが、知人によれば、事故から1日たった現場には、亡くなった被害者たちの死を悼む人たちが多数献花に訪れているとのことです。
とにかく大切なのは「楽しさ」よりも「安全」です。初心者のうちはできるだけ同乗者を乗せない。また、友人の車に乗せてもらう場合には、ルールが守られているかどうかを確認し、守られていない場合は、きっぱりと断る勇気が必要です。