甲子園とSNS、対策急務…高野連「情報の洪水」識者「一線越えた誹謗中傷は法的責任も」

SNSで不適切事案を巡る 誹謗ひぼう 中傷が拡散し、勝ち進んでいるチームが甲子園を去る異例の事態となった。夏の甲子園大会で10日、広陵高(広島)が出場辞退を発表した問題。同高によると、部内の暴力行為事案を機に真偽が入り混じった情報がネット上に広がり、生徒が登下校中に中傷を受けるなど現実世界にまで被害が拡大したという。注目されるスポーツ大会でSNSとどう向き合うか。難しい課題を突きつけられた。(岡花拓也、東大貴)

人命を優先

 「新たな(不祥事などの)事実が発覚したわけではない。生徒や教職員の人命に関わることが起きてしまうのではないかと考え、決断した。関係者に大変申し訳ない」。同日、兵庫県西宮市内で記者会見した同高の堀正和校長は 苦悶くもん の表情で頭を下げた。記者会見で頭を下げる広陵高の堀正和校長(左)(10日午後1時34分、兵庫県西宮市で)=須藤菜々子撮影

 チームは7日の1回戦で旭川志峯高(北北海道)に勝ち、津田学園高(三重)との2回戦を控えていた。堀校長によると、野球部に関係のない生徒が不審者に追い回されるなどの被害が出ており、広島県警がパトロールを強化しているという。9日に広陵高の理事会で辞退を決め、野球部長を通じて宿舎の選手に伝えた。堀校長は「選手は失意のどん底だと思う。心を立て直すのは厳しい状況だが、ケアをしていきたい」と語った。

対応後手に

 発端は今年1月。同高によると、硬式野球部の寮で禁止されているカップラーメンを食べた1年生部員(当時)に、複数の2年生部員(同)が殴るなどの暴力行為を行った(B事案)。学校側から報告を受けた日本高校野球連盟(高野連)は3月、厳重注意とした。広陵高の暴力行為事案を巡る経緯

 ところが、同高が夏の甲子園出場を決めた7月下旬以降、この暴力事案に関する様々な情報がSNS上を駆け巡った。8月5日に大会が開幕すると拍車がかかり、同高は大会第2日の6日、暴力行為を初めて公表した。

 しかし、事態はさらに悪化する。公表とほぼ同時期に「別の暴力事案(A事案)がある」との情報も拡散。同高は1回戦後、この別の事案は第三者委員会を設置して調査中であることを初めて発表した。学校側の対応も問題視され、「炎上」は収まらず、出場辞退という結果となった。

 部活動でもある甲子園大会でSNS対策は急務だ。大会副会長の宝馨・日本高野連会長は「情報の洪水みたいな状況で、迅速に対応しなければいけない」と話し、大会会長を務める朝日新聞社の角田克社長は「スピード感を持ってSNSは進んでいく。それに対応できる体制作りを真剣に考えなければいけない」と対策の必要性を語った。

  誹謗中傷やスポーツ法務に詳しい高橋駿弁護士(第二東京弁護士会)の話 「事案の内容は重大な問題で、プロセスを含めて正当な批判や議論はあってしかるべきだ。ただ、情報が 錯綜さくそう している状況においてSNSの情報をすべて事実だとするのは危険だ。仮に事実であったとしても、一線を越えた誹謗中傷は刑事・民事での法的な責任を問われかねない。糾弾する自分自身が、加害者になりうることを自覚するべきだ」

  ネット上で殺人事件に関与しているとの中傷被害に遭った経験のあるタレントのスマイリーキクチさん(53)の話 「真偽のわからない情報が拡散されることで事実のようになっている。暴力問題はあってはならないが、誹謗中傷の理由にはならない。拡散する人たちは正義だと思っているのかもしれないが、独りよがりの制裁だ。発信する前に一度立ち止まって考えてほしい」

保護者説明会を開催、質問なし

 広島市安佐南区の広陵高では10日夜、硬式野球部の保護者説明会が行われ、堀正和校長や中井哲之監督らが、辞退を決めた経緯などを説明した。

 説明会後に記者会見した堀校長によると、約250人の保護者が出席したが、質問などは出なかったという。堀校長は「学校を守ること、教職員、生徒を守ることに、保護者の方々が理解を示してくれたことに感謝している」と語った。

記事元リンク
https://www.yomiuri.co.jp/sports/koshien/summer/20250811-OYT1T50000/

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By boingo

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